通勤中に珍しく、本を読んでいた。しかも小説を。
電子ブックリーダ、Kindle Paperwhiteではなく紙媒体の文庫本で。
昨日の帰り道に読了したが、その作品は『ラストレター』。
小説を久しぶりに読むきっかけは年明けに観た映画、『ラストレター』。このblogでも感想を書いたばかりだ。
hatehatehahaha.hatenablog.com
『ラストレター』は『Love Letter』のアンサー作品になる。映画のタイトルは『Love Letter』だが、同作を監督した岩井俊二が著した小説は『ラヴレター』。
映画を観た後に『ラヴレター』を久しぶりに読み直して読み終えたら、『ラストレター』も読みたくなった。通勤途中の本屋で文庫本を見かけたので、買い求めた。
再読した『ラヴレター』は新鮮だった。久しぶりに小説を読んだこともあって。
だが、『ラストレター』の方が自分を引きつけた。その理由は、初めて読む作品だっただけではない。
『ラヴレター』は久しぶりに読むと文章が気になった。リズムが悪いし、全体的にザラつきを覚えた。自分が好きな他の作家の文章と比べると、見劣りを感じてしまった。
一方、初めて読んだ『ラストレター』の文章は洗練されていた。今、手元に置いてあった文庫本で確認すると、『ラヴレター』が著されたのは1995年。四半世紀も経っているので、作者である岩井俊二の筆力が上がっていても、うなずける。
ただ、表現において残念な点がある。読んでいて、自分だったら書かなかった部分がいくつかあった。直接書かずに行間で、書いて欲しかった箇所が。
最近、小説を書いていない自分を作家目線にさせてくれただけでも、この作品を読んだ価値はあっただろう
部分的にはそのように感じさせたが、全体の構成は素晴らしい。もし、自分が同じような作品を書いたら、意図的に彼が書かなかった部分を書いてしまっただろう。
それは、乙坂鏡史郎と未咲が交際していた大学生時代。映画でも同じように描かれていない。
小説も映画も、そのことによって作品をより印象深いものにしている気がする。 この作品は手書きで書かれた手紙がキーになっている。今の時代では希有なことだろうが。
小説では主人公の乙坂鏡史郎に、初恋相手だった裕里が手紙を書いて送っている。自分と近い年齢になって、偶然に再会した後に。
マスヲのことが初恋だった女性はこの世にいるのだろうか。確率は限りなくゼロに近いだろうが、いたと仮定する。
そんな女性から今、手紙を受け取ったら自分はどんな気持ちになるのだろうか。
妄想が暴走してしまった。春になったはずなのに、寒さが募る深夜に。