オフラインで知り合った人の中にもblogを読み続けてくれている人がいる。本当にありがたい。
先日、そんな読者の一人でもある高校時代の友人から、blogについてあることを突っ込まれた。
突っ込まれたことは自分がblogの文中で時折に使うキーワードについて。そのキーワードは『機会』。
書いているときに本筋から文章が外れてしまいそうになったときに何度か使った自覚はあった。
機会があれば別途に書くつもりだったのに、そのままになってしまっていることもあった。
そんな埋もれてしまいそうなことについて、今回は掘り起こしてみたい。
hatehatehahaha.hatenablog.com
今から30数年前。高校を卒業して大手の予備校に通いはじめた18歳の春。
小中学校の友人だった同級生と再会した。
中学校の時にはっきりとした成績の差があった友人とは進学した高校は別々。
友人は名古屋市内にある名門校、自分は都落ちして名古屋市郊外の新設校に進学した。
しかも、自分はそんな高校でも着いていくのがやっと。落ちこぼれながらもなんとか卒業したほどだった。
1週間ほど停学になったこともあってか、生活指導部の教師たちからも目をつけられていた。
そんな二人が予備校生活の初日に再会した。同じクラスになったからだった。
自分が所属したクラスは無謀そのもの。名古屋大学文学部志望コースだったから。今、振り返ってもどうしたら、そんなに自分に過信ができたのかが不思議で仕方がない。
久しぶりに再会した友人は、女生徒二人と一緒にいることが多かった。彼ら三人は同じ高校に通って卒業したことが大きな理由だったようだ。
予備校時代に通っていたころの自分には、気軽に話すことができる女性がまわりにはいなかった。そんな彼が羨ましかったし、まぶしかった。
彼女たち二人は落ち着いていて魅力的。予備校でなく、大学に通っていても違和感は全くなかっただろう。
同じクラスだった彼とは話すことはあったが、近くにいた彼女たちと話すことはほとんどなかった。
いつの間にか、彼女たちに対してコンプレックスを抱いていた。
今となっては、そのころの自分が微笑ましくもある。異性に対してそんな感情を、すっかり持てなくなってしまったからだ。
次第に彼女たちと顔を合わせれば、挨拶するくらいの仲にはなったが、それだけだった。誕生日を迎えて19歳になっても。
夏が終わり、秋が深まっても自分の成績は酷いままだった。それなりには勉強している自覚はあったのに。
勉強の仕方か地頭か、またはその両方に問題があったからなのだろう。
十二月も後半になり、冬期講習がはじまった。
自分たちが通っていた予備校は夏期及び冬期の受講は選択式だった。
通常時の授業とは別に、夏期や冬期の講習で選択した講義の受講料は別だったので、生徒のほとんどがそうだったように、自分もそれなりには親に気を遣っていた。
親になった今になって思う。一時的なちょっとした出費なんかよりも予備校生としての本分について、もっと気にするべきだったと。
自分の成績と彼女たちとの距離や関係は相変わらずだった、クリスマス前のある日。
自宅の電話に自分へ電話がかかってきた。最初に受話器を持ったのは、祖母か母親だった気がする。
どちらにしても、少し驚いていた様子だった。弟ならばともかく、そのころの自分に女性から電話がかかってくるなんて、家族の誰もが想定していなかったからだろう。
自分も電話に出て驚いたし、失礼ながら声だけでは相手が誰だかが、わからなかった。
通話しているうちにやっと、相手が誰だかがわかった。予備校のクラスメイトの一人だった。
ある講義のノートを借りることを自分は彼女にお願いしていたらしく、ノートの用意ができたので自分に電話で連絡してくれたのだった。
彼女と待ち合わせの約束をすると電話を切った。
自分は彼女と個人情報なんて交換していなかった。わざわざ自分の友人まで、彼女は自分の電話番号を問い合わせてくれたようだった。
携帯電話どころかEメールさえなかったあのころ。
思春期の自分たちにとっては異性と電話をかけるだけでも特別なことだったし、まわりの大人たちもそう思っていたのではないか。
数日後に予備校のロビーで彼女と会った。彼女はノートを両手で棟に抱えていた。
その時でさえ、何を話したかは全く覚えていなかったが、あることだけは覚えている。彼女に特別な感情を抱いたことを。
友人と一緒にいることが多かった二人の彼女。その一人をはっきりと区別した瞬間だった。
大学に合格したら、改めて彼女にお礼を言うつもりになっていた自分。というか、そんな妄想ばかりをして酔っていた。
それなりの大学に合格しなければ彼女に相手にしてもらえるとか、もらえないとか。
やがて来た現実は、妄想とは違った。改めてお礼を言う機会はないままになってしまった。一校も自分は合格できなかったから。
彼女と再会するどころか電話さえかけなかったし、彼女ともそれっきりだ。
彼女は今どこで何をしているのだろう?
おそらく、自分のことなんかは、忘れてしまっているだろう。
だが、青い春の記憶はさえなかった自分にさえも、いつも優しい。